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ケンチク。

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2007年 07月 22日

ゲル地区の住居と大気汚染について

蒼天滞在記で毎日、日記を書いているため、こちらのブログがおろそかになっていましたが、変わらずモンゴルでがんばっています。
JICAの世界HOTアングルというページで、ゲル地区に関する記事を書きました。

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ゲル地区の住居と大気汚染について

【ゲル地区】
 ゲルとは、主に遊牧民が使用している伝統的な移動住居のことです。中国ではパオ(包)と呼ばれていますがどちらも同じものです。遊牧民が都市部に流入して生成されたウランバートル市周辺の地区をゲル地区といいます。スラムのようなイメージを持っている人もいますが、モンゴルの最も庶民的な住居地域であると言えます。多くの住居でゲルが使われているため、“ゲル地区”と呼ばれています。

 ゲルは遊牧という生活形態をそのまま具現化したような建築であると言えます。移動性、携帯性、機能性や居住性など、どの点をとっても非の打ち所がないように見えます。しかし、その性能はあくまで遊牧の生活形態の条件下にあります。ゲル地区のゲルは遊牧が目的ではないため、移動する必要がありません。定住になった場合、生活の不快適さや衛生面の悪化など、様々な問題点があらわれてきます。
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ゲル地区の定住化されたゲル

【ゲル地区の住居】
 ゲル地区とは呼ばれていますが、住居はゲルばかりではありません。その他に木造またはレンガ造の建物があります。木造またはレンガ造による建物のほとんどが、日本と違い、住民自らが作るセルフビルドの建物です。

 日本で住宅を建てる場合、ハウスメーカー、工務店や建築家などの専門家に頼むのが一般的です。ゲル地区では、居住者が自ら部屋割りを考え、自ら材料を買い、自らの手で建てます。イメージ的には、日本のガーデニングを家造りで実践しているような感じです。ほとんどの住宅が、図面も描かずに行き当たりばったりで作られています。しかし、多くの住宅が器用に作られています。中には、素人レベルを超えている住宅もあります。
ゲル地区の住居と大気汚染について_f0101439_20405778.jpg

セルフビルドの住宅

【ゲル地区からの大気汚染】
 ゲル地区の住宅から出る煙が大気汚染の原因になっています。煙はストーブで燃やされている石炭によるものです。そのストーブは、ゲルとセルフビルドの住宅とともに、暖房と調理の役割を持っています。言い方を変えると、料理やお茶をつくるときに火を焚き、それが同時に暖房にもなるということです。一つの方法で、二つの役割を果たしています。

 とても便利で機能的なストーブですが、冬期間はその煙がゲル地区だけでなくウランバートルの街全体を覆いつくしています。大きな社会問題です。
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ゲル地区住居の煙突からの煙

【現在のゲルのイメージ】
 現在のゲルのイメージはどうでしょうか?少しでもゲル地区の現状を知っている人の場合は、
・美しい青空の下、大草原にポツンとある白いテントのような建物…清々としたイメージ。
・蒼い空を石炭の煙で満たすゲル地区のゲル…暗く薄汚れたイメージ
という、相対する両極端なイメージを同時に持っています。

 モンゴルは現在、急激な変化と経済成長の最中にあります。そのため、至る所にほころびが生じています。ゲル地区による大気汚染もほころびの内の一つです。イメージだけではなく、様々なほころびの改善がこれからのモンゴルの課題であると言えるでしょう。  
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大草原のゲル

JICA ホームページ世界HOTアングル
アジア・大洋州
http://hotangle.jica.go.jp/asia_pacific/index.php

by katojun0826 | 2007-07-22 20:43 | モンゴル


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